Librus PR担当:御社の事業や取り組みについてご紹介いただけますか。
DK:当社は1961年に愛知県蟹江町に設立した金属加工会社です。主な事業はアルミニウムの押出型材製造で、アルミサッシや機械のカバーといったものに使われる商品を作っています。強みは小ロット短納期。納期厳守を徹底し、加工から組み立てまでワンストップで行うことができる点です。穴あけや組み立て、溶接などは必要に応じて協力会社に委託しながら行っています。
Librus PR担当:発注などのやり取りはどのように行っていますか。
DK:まだ、電話、メール、ファックスが中心です。
Librus PR担当: Slackやメッセンジャーといった新しいコミュニケーションツールの導入はハードルが高いのでしょうか。
DK:新しいコミュニケーションツールはもちろん良いと思います。しかし慣れてらっしゃらない会社が多いのと、慣習もあり、各社において電子化で行う仕組みに移行出来ていないようで、わたくしどもの業界の場合、メールとファックスが結構残っています。
Librus PR担当:御社は1960年から続く長い歴史がありますが、デジタル技術を導入する際に課題に感じたことや、その課題をどのように解決してきたかについて、何かエピソードがあれば教えていただけますか。
DK:以前は紙が多く、現場の状況が把握しにくかったので、「見える化」の取り組みを進めているところです。
Librus PR担当:具体的には、どのようなデジタルツールを使用して「見える化」を進めているのでしょうか。
DK:日立製作所の生産管理システムを導入しています。ただ、データの取り扱いについては、まだDI(デジタルインターフェース)を導入することができていないため、EXCELでデータを書き出し、マクロを活用してDIに対応させるといった形で取り組んでいます。
Librus PR担当:今後、導入を検討しているツールはありますか。
DK:セールスフォースのCRMを検討しています。ダッシュボード機能は生産管理システムを入れている会社のシステムを導入するか、業界のスタンダードなシステムにするか、検討しています。この導入で受注内容の管理や生産の管理、出荷までの一連の流れと、その中で発生する歩留まりや生産性、工数の管理も含めて「見える化」していこうとしています。また、型ごとに利益が出ているのか、適切な工場運営ができているのかを見る必要があるため、原価計算やPLM(プロダクトライフマネジメント)も検討しています。
Librus PR担当:PLMの活用によって、目指しているところは。
DK:最終的な目標は製品の情報を収集し、次の製品開発に生かしていくというところでしょうか。製造業ではこのような取り組みを行っているのは大手企業が多く、中小企業では取り組んでいても、正確とは言えません。私たちの会社でも精度を上げていきたいと考えています。データの「見える化」を通じて、生産の効率化や品質向上につなげていきたいと考えております。
Librus PR担当:「見える化」や効率化に取り組むきっかけは何だったのでしょうか。
DK:当たり前のことを実行する必要があるということでしょうか。当社は素材の上流に位置しているのですが、業界では納期遅れが一般的になっています。そこで他社との差別化を図るためには生産管理を徹底し、適切な納期設定を行う必要があると考えました。バッファーがありすぎてもいけません。8割程度の稼働に抑えて、急な案件を受け入れられるようにしていても、入らなければ終わりです。残業せずに工場を100%フル稼働させる緻密な生産工程を構築していくためには、見える化が必要になってきます。また機械からデータをとり出せるようにもしています。押し出す機械は、原材料の温度や切断状態、形状など複雑な要素が絡み合って製品ができているため、設計の再現性を高めることが私たちの強みになると考えています。
Librus PR担当:顧客情報や個人情報の管理についてサイバーセキュリティ対策に関してはどのような取り組みを行っていますか。
DK:セキュリティ対策に関してはまだ不十分です。セキュリティソフトを入れたり、添付ファイルの送信方法に気を配る程度だったりで、専門的なセキュリティ対策はほとんど行っていません。情報漏洩に関してはエモテットなどのマルウェアに感染するリスクを考慮して、対策を取り入れたいと思っています。
Librus PR担当:それは重要な取り組みですね。CRMの活用やAIに関する取り組みなど、他にも新たな展望や計画はありますか?
DK:AIに関しては、金型設計の分野で活用できる可能性を探っています。例えば、シミュレーションを通じて過去のデータを元に、最適な金型パターンをAIで予測することができるかもしれません。クライアントに対しても、より効率的な金型設計を提供するために活用したいと考えています。
Librus PR担当:型のパターンは約3万あるということですが、これまではどのようにシミュレーションしていたのでしょうか。
DK:お客様の製品1つに対して1つの型を作成するのですが、経験と勘で行ってきました。
Librus PR担当:新規事業についても教えていただけますか。
DK:当社の方向性としては、ニッチなニーズなところに注力していこうと思っています。その中には、意匠面と機能面の2つがあります。まず意匠面ではアルミ型材のデザインを特化させていこうとしています。機能面では、お客様に合わせた材質ごとのアルミ合金を開発して製品を提供していく予定です。デザイン的にカスタマイズする領域と機械的性質、機能面としてカスタマイズする領域の2つの柱を今後の主力事業にしていこうと思っています。
Librus PR担当:他の会社と比較すると、デザインや機能面に異なる点があるのでしょうか。
DK:他の会社はあまりその点を謳っていません。特に意匠面の場合、それぞれの加工方法やデザインに特化した企業が多く、一括して提供している会社は少ないようです。そして当社はアルミ加工で可能な意匠種類を誰にでもわかるようにしていきたいと思っています。機能面は他の会社も取り組んでいますが、当社は通常1トンや20トンの大量生産が必要なアルミビレットを5キログラムから作ることができる新しい技術を開発しました。これにより超小ロットで合金を開発・製造できる点が当社の売りの一つです。そこに今後はAIを活用して材料の組み合わせや特性を予測するMI(マテリアルズインフォマティクス)の導入も検討しています。
Librus PR担当:本日は貴重なお話をありがとうございました。