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経営戦略・事業戦略

創業計画書の記載のポイント その1

2024.12.02

日本政策金融公庫(以下、公庫といいます。)に創業融資の申し込みをする際には、創業計画書(※1)を作成する必要があります。公庫のホームページには、主な業種ごとの記載例やセルフチェックリストもございますので、それを参照にしつつ、もう少し詳しく記載方法について解説します。

(※1)日本政策金融公庫の創業計画書は、以下のサイトに掲載されています。

https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

創業計画書の構成について

日本政策金融公庫の創業計画書の構成は、以下のとおりとなっています(令和611月末現在)。

  • 創業の動機
  • 経営者の略歴等
  • 取扱商品・サービス
  • 従業員
  • 取引先・取引関係等
  • 関連企業
  • お借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し
  • 自由記述欄

創業計画書のなかで、①創業の動機、②経営者の略歴等は、なぜ企業を設立したのか、本人が本気で事業を成功させようと考えているのかを判断するうえで、非常に重要な項目となっています。 ③~⑤は、公庫が創業する事業の内容を把握するための項目、⑥~⑧は創業資金の使途を確認するほか、融資をするにあたり、代表者や他の関係会社のために資金が使われないか、代表者が過重な債務を抱えていないかを確認するための項目となっています。⑨が今回の事業がどれくらいの利益を上げられるのかを確認する項目ですが、こちらは、別途「月次収支計画書」を作成し、その内容を踏まえて記載することとなります。

今回は、創業計画において重要となる①創業の動機、②経営者の略歴等、について解説します。

  • 「創業の動機」について

創業の動機とは、あなたがなぜそのビジネスを始めたいと考えたのか、その背景や理由を説明する部分です。公庫のセルフチェックリストでは、創業の動機の欄について、「創業への熱意や創業を志すまでの経緯を記載していますか」とありますが、創業者の情熱や目的意識を重視しており、このセクションを通じてあなたのビジネスへの意気込みや目標を伝えることが求められます。

効果的な「創業の動機」の書き方としては、以下のような内容を意識して記載してみましょう。

①パーソナルなストーリーを織り交ぜる

ビジネスを始めるきっかけとなった個人的な経験やストーリーを盛り込みましょう。例えば、特定の問題に直面し、それを解決するためにビジネスを立ち上げることを決意した場合、そのエピソードを具体的に記載します。これにより、読む人にあなたの創業についての共感や納得感を持ってもらうことができます。

②社会的なニーズや市場のギャップを明示する

あなたが提供しようとしている商品やサービスが、どのような社会的なニーズや市場のギャップを埋めるのかを明確に示しましょう。もし、具体的なデータや調査結果があるのであれば、それらを引用して、説得力のある説明を心がけると良いでしょう。

③長期的なビジョンを提示

ビジネスの将来像や目標を明確に描き、その実現に向けた計画を簡潔に記載します。長期的なビジョンを持っていることを示すことで、創業への真剣な意気込みをアピールできます。

「経営者の略歴等」について

この項目は、金融機関に対して代表者の信頼性と能力を示すためのものです。適切に記載することで、融資の可否に大きな影響を与えるのです。

公庫の創業計画の「経営者の略歴等」には、括弧書きで、「略歴については、勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください。」との記載があり、また、セルフチェックリストにも、「担当した業務や役職、実績などを記載していますか?」「身に着けた資格・スキルなどがあれば、それらについて記載していますか?」とされています。

つまりは、単なる経歴だけを記載しては駄目ですよ、ということなのです。

「ラーメンの食べ歩きが好きで、理想のラーメンを作り上げたので、勤め先を退職し、ラーメン屋を開業することにしました。」として融資相談を受けた場合、一度食べてみたいな、とは思うでしょうが、融資可否については迷ってしまう、むしろ否決されるのではと思います。なぜならば、飲食店を経営するには、提供するメニューが顧客に受け入れられることはもちろん必要ですが、接客をはじめとする店舗運営のオペレーションが必要に重要になってきます。そのため、勤め先を退職し、一旦はラーメン店で実務経験を踏まえてから、創業してほしい、というのが融資担当者の率直な感想と思います。

創業の動機や熱意も大事ですが、公庫の担当者は、事業を継続し利益を上げ、それにより融資資金を全額弁済してもらえるのかどうかを最重視しています。そのため、あなたが事業を本当に実現・継続できるのかについて、「経営者の略歴等」を読んで判断したいと考えているのです。

このことを踏まえ、効果的な「創業者の略歴等」の書き方として、以下を意識して記載してみましょう。

  • 学歴や所有資格などは簡潔に

過去の学歴が直接今回の創業に関係しているものでないのでしたら、簡潔に記載しておけば十分です。所有資格については、創業事業に関係がある資格については、漏れがないように必ず記載するようにしましょう。創業をするために必要な資格を取得してきた、ということは十分なアピールポイントとなります。

  • 今回の創業事業との関連性がわかるような記述をする

創業する事業に関連する経験やスキルを強調することが重要です。ビジネスを成功させるために、あなたが持っているスキルや経験をアピールしましょう。これまでの職歴や学歴、特に関連する分野での実績を具体的に示すことで、信頼性を高めることができます。

例えば、前職で物流会社に勤務していた方が、人材サービス業を創業するというケースの場合、融資担当者は「前職と関係ない事業じゃないのかな」という疑問を感じてしまうと思います。

そのような場合であっても、「物流会社で人事を担当し、人事評価システムの構築について勉強してきました。このノウハウは他の事業でも活かせると思い、人材サービス業を創業します」という説明がされていれば、創業の動機と過去の経歴との関係性を理解でき、事業の継続可能性を感じてもらえるのです。

③具体的なエピソードを交える

ただ単に事実を列挙するのではなく、具体的なエピソードを交えて記載すると、より印象に残りやすくなります。例えば、過去に成功したプロジェクトや困難を乗り越えた経験などを紹介すると良いでしょう。

まとめ

日本政策金融公庫の創業計画書における「創業の動機」と「代表者の略歴等」は、代表者の信頼性と能力を示す重要なセクションです。明確かつ簡潔に記載し、具体的なエピソードや起業への情熱を交えることで、金融機関の担当者に強い印象を与えることができます。

公庫の創業計画書の様式ですと、記載欄が少なく、十分な説明ができないことも多いので、別紙にて十分に思いを記載することを検討しても良いかと存じます。

また、自分の強みとなる能力を自分では気づいていない方や、文章でうまく表現できないという創業者の方もいらっしゃるかと思います。そのような場合には、家族や友人に創業計画書を見てもらったり、創業計画書の作成経験の豊富なコンサルタントの方にアドバイスをもらったりすることも有効な方法と思われます。

創業計画書において、融資の可否に大きな影響を与える部分ですので、入念に準備することが求められます。創業者の方が納得のいくような記載をして、融資の面談に備えましょう。

記事監修者紹介

本記事は、創業支援や資金調達に豊富な実績を持つ**みらいアーク株式会社(Mirai Arc Inc.)**の監修を受けて作成されています。みらいアーク株式会社は、創業希望者やスタートアップ企業の成長を支援するため、融資のサポートから経営コンサルティングまで幅広く対応。経験豊富なコンサルタントチームが、数多くの成功事例をもとにアドバイスを提供しています。

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