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創業融資を失敗しないために注意しておきたいこと(会社設立後半年~編)

2024.11.19

創業融資のタイミングとしては、会社設立後すぐから検討することをお勧めしていますが、創業から半年以上が経過し、事業の拡大を目指し追加で資金が必要となる企業、もしくは事業が軌道に乗らないことを要因として資金調達を考える企業も出てくるかと思います。

会社設立後半年程度経過した企業が創業融資を受けるために留意すべきポイントについて解説します。

会社設立後半年を経過した企業が創業融資を受けるためには

事業開始から半年程度が経過しますと、金融機関は、今回必要としている資金が事業拡大のための資金なのか、それとも当面の赤字を補填するための資金なのかなどを確認するため、正確な試算表の提出を求めてきます。

また、試算表の数値に基づき、当初の事業計画に対する現実的な評価を行い、見直し後の事業計画の提出が求められます。

正確な試算表の作成と提出について

(1)創業まもない企業の試算表には落とし穴がある!

創業間もない経営者の場合、簿記・会計などに触れたことはなく、試算表の作成を税理士に任せっぱなしというケースも多いです。最近は、会社設立からサポートし、設立後も顧問報酬を低額で抑えてサポートを継続してくれる税理士も多いので、「試算表は、税理士に任せているので大丈夫」と思う経営者もいらっしゃるのですが、そこに大きな落とし穴が潜んでいるのです。

創業してすぐの場合、毎月税理士が会社に足を運んでくれることは難しく、毎月、銀行口座の写しや領収書を税理士に送付するなどして記帳を行っていただくケースが多いように思います。また、試算表の作成もなく、年に一度だけ税務申告を行うために決算書の作成を依頼している経営者もいらっしゃるのではないでしょうか?資金調達が不要な会社であれば、このような形であっても問題はないのですが、資金調達を検討する会社の場合、不安が残ってしまいます。

そして「試算表の落とし穴」は、このように、①帳簿への記帳を税理士に任せっきりとし、②年に数回しか行わない、そのような経営者において起こりうる、試算表の精度が欠けている状態をいいます。

(2)精度のかける試算表の具体的な例

創業して1年以内の企業によくおこる記帳のミスの発生原因は、現金で支払った経費等の領収書を税理士に提出できないことによって発生します。

本来5万円の消耗品を現金で購入すれば、貸借対照表の現金がなくなり(貸方に計上)、損益計算書の費用に5万円が計上(借方に計上)されます。領収書がない場合、この記帳がされないため、費用は計上されず、現金は残ったままとなります。領収書がないと税理士はその内容を把握できないので、試算表が不正確となってしまうのです。

結果として、手元にない「現金」に多額の金額が計上されている試算表が作成されてしまうのです。もし、お手元に試算表があるようでしたら、貸借対照表の「現金」の残高を確認してみてください。10万円を超える金額ですと、試算表は不正確である可能性がありそうです。

このような現金に多くのお金が計上されている、もしくは「現金」を減らすために「社長貸付金」「仮払金」などの勘定科目に振り替えている試算表は、創業間もない企業に起こりやすい試算表の不正確さなのですが、金融機関の担当者もこのような試算表は見慣れているため、必ず内容の説明を求められますし、「大事なお金の管理をしっかりできていない経営者には融資はできない」との判断が下されてしまいます。

(3)試算表の精度を上げるための対策

このような残念な結果とならないため、以下3つ対策をご紹介します。

法人名義のクレジットカードを作る

現金で支払いを行うことが、試算表の精度を下げる要因となります。そのため、法人名義のクレジットカードを作成し、極力現金ではなくカード払いを利用し、すべての支出を明細に記録していくのが有効です。

個人用の財布と会社用の財布を分ける

社員がいない会社であれば、個人用の財布と会社用の財布を2つ用意することも有効です。業務で使用するお金は会社用の財布からしか使用しないことを徹底し、毎月月末ごとにその残高をチェックし、税理士に報告すると良いでしょう。

試算表の提出頻度を上げてもらう

1年近く前に使った金額を思い出すことはかなり至難の業です。試算表は、企業の経営状況を把握するための重要なツールです。顧問税理士に試算表の作成頻度を上げてもらうことで不明瞭な資金が発生した場合のトレースが容易になります。理想としては毎月、最低ども3か月に一度は試算表を提出してもらえるよう顧問税理士に依頼いただければと思います。

現実的な事業計画の提出

次に事業計画の提出についてです。

創業してすぐであれば、実績がないため、ある程度自由な計画の作成が可能ですが、半年程度を経過しますと、正しい試算表の数値に基づき、当初の事業計画に対する現実的な評価を行い、見直し後の事業計画の提出が求められます。

(1)現状分析

まず、現状の事業環境を徹底的に分析しましょう。市場の動向、競合他社の動き、自社の強みと弱みを明確にし、現状のポジショニングを把握することが重要です。

事業をスタートすると、自分では強みだと思っていたことが意外と通用しないことも出てきます。例えば、住宅リフォームの下請けを行っていた個人事業主の方が、お客様と話をすることは得意なので新規顧客獲得には自信があるとして会社を設立されましたが、なかなか新規の顧客が獲得できずに苦労されていました。住宅リフォームの場合、金額が高額であり、またリフォーム詐欺のニュースなども耳にするためお客様がより慎重に会社を選ぶ傾向にあります。そのため、競業他社のホームページなどを再検証することで、お客様に対して訴求すべきポイントを整理するなど、一から営業面を見直しすることとなりました。

多くの経営者の方のお話を伺いますと、創業時に思い描いていたとおりに事業が軌道にのることのほうが珍しいように感じます。冷静に現状を分析することで、事業計画の修正の必要性や方向性を明確にすることができます。

(2)目標の再設定

次に、目標を再設定します。市場環境や自社の状況に応じて、現実的かつ達成可能な目標を設定し直すことが重要です。目標の再設定は、事業計画全体の見直しに直結します。

ここで重要なのは、目標の再設定に至った要因をしっかりと説明できるかどうかです。

「商品Aは売れなかったので、次は商品Bを売ることにしました」というだけの説明では、「多分、商品Bの販売も失敗するだろうな」と金融機関の担当者は感じるでしょう。

商品Aが売れると思って創業をしたわけですから、商品Bに切り替えるという選択をするにいたった過程をしっかりと説明したいところです。例えば、「お客様に商品Aの説明をしていたところ、むしろ別のニーズがあることがわかったので、商品Bに切り替えることとした」とか、「商品Aの価格帯では競合との競争が厳しいので、最低限の機能のみを残し、価格面で勝負できる商品Bを販売することとした」など、現在までの事業活動の中から見出された仮説の中から、目標の再定義を行っていくことが望ましいです。

(3)戦略の見直し

設定した目標を達成するための具体的な戦略を見直します。製品・サービスの改良、新規市場の開拓、マーケティング戦略の強化など、効果的な手段を検討し、最適な戦略を策定します。

また、金融機関から融資を受ける場合には、その戦略を実施していくためには資金がどの程度必要となるのかも具体的に計画することが好ましいです。

例えば、卸売りが中心だった製品について自社でECサイトを作成し販売するという戦略を立てる場合、ECサイトの作成コストだけではなく、ECサイトに誘導するためのSEO対策の予算、カスタマーサービスのためのコスト、セキュリティ対策などを網羅的に検討します。そのうえで自己資金では不足する金額を金融機関の融資で調達していく、という流れになります。

このような(1)~(3)のSTEPを踏まえることで、金融機関に対して現実的で信頼性のある事業計画を提示することができます。

3.まとめ

設立後半年が経過した企業が創業融資を成功させるためには、正しい試算表の作成と提出、現実的な事業計画の提出が不可欠です。ポイントをしっかりと押さえ、透明性と信頼性を持って融資審査に臨むことで、事業のさらなる成長を支える資金調達を実現することができるでしょう。成功に向けて、一歩一歩確実に準備を進めていってください。

記事監修者紹介

本記事は、創業支援や資金調達に豊富な実績を持つ**みらいアーク株式会社(Mirai Arc Inc.)**の監修を受けて作成されています。みらいアーク株式会社は、創業希望者やスタートアップ企業の成長を支援するため、融資のサポートから経営コンサルティングまで幅広く対応。経験豊富なコンサルタントチームが、数多くの成功事例をもとにアドバイスを提供しています。

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