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創業融資を失敗しないために注意しておきたいこと(会社設立前後編)

2024.11.14

2023年に休廃業・解散、倒産により市場から退出した企業の件数は、5万8,478件にものぼり、過去最多を更新しています(※1)。

このような状況のなか、新しい企業が生まれることで、新たな需要や雇用が創出され、地域経済や国全体の経済が活性化します。特に中小企業やスタートアップは、イノベーションの源泉となり、経済の新陳代謝を促進するとされており、国は創業を積極的に支援しています。

ホームページを検索すると高い創業融資の成功率を記載しているサイトを見かけますが、国が積極的に創業を支援する立場にありますので、手続きを間違えなければ、高い確率で日本政策金融公庫や信用保証協会の制度を活用した創業融資は受けることができます。

一方で、創業融資に失敗する企業の場合、会社設立前後に誤った手続き等を行っているケースが目立ちます。一回間違った手続き等をしてしまいますと、創業融資を受けることが困難となり、期待していた資金を得ることができず、スタートから苦労してしまいます。

このようなことにならないためにも、企業の設立段階から、注意を払って手続きを進めたいものです。

(※1)東京商工リサーチによる

1.設立後間もない企業において創業融資で重視されるポイントとは

創業融資を成功させるためには、日本政策金融公庫や信用保証協会が審査の際に重視するポイントを把握し、適切な準備をすることが重要です。以下では、特に企業設立間もない段階での創業融資において重要視される審査ポイントをいくつか挙げます。

(1)経営者が信頼できるかどうか

1つ目は、融資審査を通じて、経営者を信頼してもらえるかどうかという点です。これには、経営者の信用力を見るために、過去の金融取引履歴や現在の借入状況、返済能力などを評価されます。したがって、起業前に自身の信用情報を確認し、必要に応じて改善する努力が求められます。例えば、過去の滞納履歴がある場合は、それを解消し、クレジットスコアを向上させることが重要となります。

また、経営者がコンプライアンス(法令や規範を遵守し、倫理的な行動を取ること)意識を持っているのかどうかも審査のポイントとなります。

(2)自己資金の割合

自己資金の割合も審査において重要視されます。これは、(1)の「経営者が信頼できるかどうか」にも関係していますが、経営者自身が事業に対してほぼリスクを負わずに、金融機関の借入金だけで事業を行いたい、というのでは、経営者のコミットメントが低いと見なされ、融資の審査が通りにくくなります。特に、日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証での融資制度であるため、その傾向が強くなります。一般的には、総資金のうち少なくとも30%以上の自己資金を用意することが望ましいとされています。

(3)事業計画の実現可能性

経営者が説明する事業計画が実現可能かどうかも審査の大きなポイントとなります。金融機関は、事業計画が具体的かつ現実的であるかを厳しく評価します。市場調査や競合分析をしっかり行い、数字に基づいた売上予測や収支計画を作成することが必要です。

また、事業の強みや差別化ポイントを明確にし、どのようにして成功を収めるかを説得力ある形で説明することが求められます。

以上の3点が審査においてのポイントとなりますが、(3)よりも(1)、(2)のほうが、より審査時の重要性は高いといえます。なぜなら、ある程度の合理的な計画が策定されていれば、金融機関の審査担当者が、「このような計画は無理なので、融資はできません。」とは言えないからです。「計画を実現できるかわからないけど、自己資金もしっかり用意しているし、経営者も信頼できそうだから、審査を通そう」、これこそが創業融資を審査する担当者の本音であると理解してください。

2.具体的な失敗例

(1)経営者の信用情報に傷があるため、融資に失敗するケース

信用情報に傷があるとは、クレジットカードやローンの支払いが滞ったり、クレジットカードの多重申込みや強制解約、携帯端末代金の未払い、代位弁済、債務整理などを行ったりした場合に、その情報が信用情報機関に登録されることを指します。

金融機関が融資の審査をする際には、創業者の信用情報を重要な判断材料とします。信用情報が良好であれば、融資を受けやすくなりますが、信用情報に傷があると、その内容にもよりますが、創業融資を受けるハードルは1段階上がってしまいます。

日本では、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)などの信用情報機関が存在しますが、これらの機関から自分の信用情報を取得することが可能です。創業の前に自分の信用情報を確認し、融資が受けやすい状態であるのかどうかを確認しておくことをお勧めします。

(2)第三者名義を借りて創業し、融資に失敗するケース

前述の経営者の信用状況に傷があることなどを理由に、家族や友人などの名義を借りて、創業しているケースがあります。

一見すると問題ないように見えますが、金融機関の審査の過程において、かなり多くのケースで実質的な経営者が誰であるのか問題となります。なぜ、名義を借りていることが分かってしまうのでしょうか?以下のような事例があります。

①名義上の経営者の過去の職務経験と創業するビジネスとの関連性がない

このような場合、金融機関としては計画の実現性をより注意深く審査するため、事業の核心的な質問をすることとなりますが、名義上の経営者は的確な回答ができないことが多く、金融機関の審査で否決されることがあります。

②出資金の出所が異なっている。

 創業融資の審査においては、経営者個人の預金通帳の提出が求められ、過去1年程度の口座の出し入れをチェックされます。名義上の経営者の口座の実質的な経営者から資金が振り込まれ、その資金をもって会社を設立している場合、金融機関としては実質的な経営者はどちらなのか判断ができず、審査で否決されるケースがあります。

 また、企業の設立においては、設立直前に預金残高があれば設立できるため、法人設立後すぐに資金を実質的な経営者に戻しているケースもあります。このような場合、金融機関としては自己資本がない会社として判断するため、この場合も審査で否決されてしまいます。

③代表者や株主が短期間で変更されている。

 一旦企業を設立したものの、名義上の経営者・株主では創業融資が受けられないと分かった段階で代表者や株主を変更している会社もございます。このような場合でも、金融機関は不自然さを感じ、審査で否決するケースが多いようです。

第三者名義の借用は、短期的な解決策に見える場合がありますが、実は金融機関が最も嫌がるのは、この名義貸しをしている企業への融資になります。そのため、審査も厳しいですし、名義貸しをしている会社であると金融機関が把握すれば、長期にわたり融資を受けることが難しくなります。

(3)休眠会社を活用して、融資に失敗するケース

まれに休眠会社の株式を買い取り、事業を開始している経営者の方もいらっしゃいます。休眠会社を利用することで、事業を行う上での許認可の引継ぎや税務上のメリットなどもあるとされています。しかし、休眠会社であっても融資を受ける際には、過去の決算書の提出が求められる場合がありますが、休眠中に決算書を作成していない場合や、税務申告を行っていない場合は、これが審査において大きな障害となります。

現在、資本金は1円であっても企業の設立はできますし、設立時の費用を軽減すための合同会社という仕組みもあります。そのようななかで休眠会社を活用しなければならない合理性を金融機関に説明するのは難しいです。

新設会社であれば、最新の事業計画や財務状況を基に審査を受けることができ、融資の可能性が高まります。そのため、創業融資を受けるためには、新しく会社を設立する方が賢明と思われます。

(4)コンプライアンス意識の欠如により、融資に失敗するケース

金融機関は法令に違反する企業に対して融資を行うことができません。そのため、創業融資に際しても、経営者がコンプライアンス意識をもっているかどうか重視します。

「こんなの当たり前でしょ」と思われるかもしれませんが、例えば、事務所の賃貸コストを安く抑えるために、知り合いが借りている事務所を転貸している会社もあるかと存じますが、知り合い(借主)と不動産の貸主の間の不動産賃貸借契約を確認されているでしょうか?

金融機関は審査において、企業の実在性を確認するために不動産賃貸借契約の提出を求めることがあります。契約書を確認したところ、そもそも転貸借契約が結ばれていない場合や、転貸が禁止されているにも関わらず貸主の同意を取得せずに転貸していれば契約違反が発覚したときのリスクを懸念せざるを得ません。

このような手続きを通じて、経営者のコンプライアンス意識が低い、と判断されてしまうと創業融資の審査においては大きなマイナスとなってしまいます。

会社設立時には、法的手続きや規制をしっかりと理解し、遵守することが必要です。

3.まとめ

日本政策金融公庫や信用保証協会は積極的に創業を支援する立場ですが、すべての企業に融資をしてくれるわけではありません。両機関の審査担当者は、過去の多くの融資事例のなかから、創業融資を行ってもうまくいかないケースを蓄積してきていますし、また、多くの企業から融資の申し込みを受けているため、1つの企業の審査時間には限りがあります。そのため、審査担当者に「なんとなく怪しそうな会社だな、うまく経営できなさそうだな」との印象を持たれてしまえば、その段階で創業融資を受けることは難しくなってしまいます。

創業融資を成功させるためには、正当な手続きを踏み、透明性を保つことが不可欠です。会社設立前にもう一度、不透明と思われそうな手続きがないか確認してみると良いでしょう。

記事監修者紹介

本記事は、創業支援や資金調達に豊富な実績を持つ**みらいアーク株式会社(Mirai Arc Inc.)**の監修を受けて作成されています。みらいアーク株式会社は、創業希望者やスタートアップ企業の成長を支援するため、融資のサポートから経営コンサルティングまで幅広く対応。経験豊富なコンサルタントチームが、数多くの成功事例をもとにアドバイスを提供しています。

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