M&Aを検討する際、どの業者に依頼するかは非常に重要です。銀行は融資を目的に買い手に有利な条件を提示する傾向があり、売り手にとって不利な取引が進む可能性があります。一方、M&A仲介会社は中立的な立場で双方の利益を調整し、より公平な取引を実現します。本記事では、銀行と仲介会社の違いを解説し、複数の業者に相談し最適な条件を見つける方法について詳しく紹介します。
M&Aにおける銀行と仲介会社の役割の違い
M&Aの実施に際して、銀行とM&A仲介会社はそれぞれ異なります。銀行は「融資ビジネス」を中心に活動し、買い手企業に対しての資金提供や、M&A後の長期的な取引関係の維持を目的としています。一方、M&A仲介会社は、売り手と買い手の間で中立的な立場を保ち、M&Aの成功を目指してサポートすることを目的としています。
銀行が提供するM&Aアドバイザリーの特徴
銀行がM&Aアドバイザリーを提供する場合、主な目的は買い手側に対する融資ビジネスの拡大です。銀行は、買収先企業に対する財務や融資リスクを慎重に評価し、融資の回収可能性を重視します。このため、銀行が売り手企業に対してアドバイザリーを提供する場合には利益相反が生じるリスクがあります。そのため、銀行は買い手に有利な条件を提示することがあり、売り手側にとっては不利になる可能性があります。
仲介会社のM&A業務のメリットとデメリット
M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方に公平かつ中立的なアドバイスを行い、利益相反のリスクが低い点が大きなメリットです。また成功報酬型の手数料体系を採用しているため、取引が成立しない限り報酬が発生しません。この点は売り手企業にとって安心して取引を進められます。ただし、銀行と異なり融資機能は持たないため、M&Aを行う際や買収後の資金調達を銀行に依頼する必要がある場合があります。これらの違いはありますが、売り手企業にとって、利益相反の観点からも、より中立的なサポートを受けるためにはM&A仲介会社を選ぶ方が最適なケースが多いです。
M&Aで仲介会社を選ぶ理由とそのメリット
特に中小企業のM&Aでは、自社のみで買い手や売り手を見つけ、交渉や契約を進めるのは難しく、専門的なサポートが欠かせません。以下では、仲介会社を選ぶ理由とその主なメリットを紹介します。
仲介会社による売り手と買い手のマッチング
M&A仲介会社は、独自のネットワークを駆使して、最適な売り手・買い手を短期間で見つけることができます。M&Aにおける成功は、適切なパートナー選定に大きく依存しますが、仲介会社は事業シナジーを考慮した相手企業の紹介を得意としています。例えば、M&A後の統合によってどれだけのシナジー効果が期待できるか、文化的な適合性はどうかなどを評価し、両社に最適な条件を提示します。
仲介業者が提供する効果的な交渉支援
M&Aのプロセスは、価格交渉や契約条件の調整など、複雑で多くの専門知識を要します。仲介会社は中立的な立場で交渉を進め、感情的な対立を避けつつ、双方にとって最善の妥協点を見つけるサポートを行います。特に、売り手と買い手が直接交渉する場合は感情的なもつれが生じることも多いですが、仲介者が間に入ることでスムーズに進行する可能性が高まります。
成功報酬型の仲介手数料のメリット
多くのM&A仲介会社は、成功報酬型の手数料体系を採用しています。これは、M&Aが成約しなければ手数料が発生しないという仕組みであり、売り手側にとってリスクが低いのが特徴です。また、報酬の支払いは成約後に行われるため、資金面での負担も軽減されます。
このように、M&A仲介会社を利用することで、適切な相手探しや交渉のサポート、成功報酬型の手数料体系を活かして、スムーズかつ効果的なM&Aを進めることが可能になります。
銀行の利益相反リスクと仲介会社の中立性
M&Aにおいて、銀行とM&A仲介会社は異なる立場で取引をサポートしますが、特に銀行が抱える利益相反リスクと仲介会社の中立性は、取引の安全性や公正性に大きく影響を与えます。
銀行の利益相反リスク
銀行は主に融資業務に重点を置いているため、M&Aにおいて利益相反のリスクが発生しやすいと言われています。特に、銀行は買い手側に融資を提供することで利益を得る立場にあるため、売り手企業の利益よりも買い手側に有利な条件で取引を進める可能性が高まります。例えば、買収資金を融資する際、銀行は買い手が支払う金額を抑えたいと考えることが多く、結果として売り手の希望する価格より低い条件で取引が進むリスクがあります。このような状況は、銀行が売り手側のアドバイザーになる場合にも発生し得るため、銀行が取引の双方に関与する場合は特に注意が必要です。
仲介会社の中立性と取引への専念
一方で、M&A仲介会社は売り手と買い手の双方に中立的な立場でサポートを提供することが一般的です。仲介会社は、特定の企業に偏らず、双方の利益を調整することが求められるため、公正な取引が実現しやすくなります。仲介会社の報酬は成功報酬型が多く、取引が成立しない限り手数料が発生しないことが多いため、無理に取引を成立させる圧力が少なく、クライアントの利益を優先しやすいのもメリットです。
このように、M&Aを成功させるためには、銀行の利益相反リスクを理解したうえで、取引における中立性が高い仲介会社を選ぶことが重要です。
まとめ
M&Aを行う際、銀行と仲介会社のどちらに依頼するかは慎重に検討すべきです。特に重要なのは一社のみに依存せず、複数の業者に相談することです。M&Aを進める際には、銀行や仲介会社が提示する評価額や締結書類の内容を確認し、慎重に比較する必要があります。評価額に関して安易に判断を下さず、信頼できる情報を基に最適な条件を見つけることが大切です。どの業者と契約するかは、単に提示された価格だけでなく、サポート内容や取引条件を総合的に判断して選ぶことをお勧めします。
