日本でもすこしづつ知られ始めましたが、人生の大きな課題を達成、或いは勝者となったはずの方が幸せを実感できない、逆に、達成したことで心身の健康を著しく損なう事例があります。
例えばFIRE(「Financial Independence, Retire Early」経済的自立を伴う早期リタイアのこと)。現代社会における成人の最大のストレス源である「経済的な不安」から生涯解放されたのに、不幸になるとは?それも特にFIREのために心血をそそぎ、多くを犠牲にして達成した方ほどそのリスクが高い傾向があると世界中のカウンセラーや心理の専門家らは警告しはじめています。
実はこれまでも仕事一本でキャリアを爆進の「モーレツサラリーマン」ほど定年し夢にみた悠々自適のはずの生活が始まった途端、痴呆、心臓麻痺、脳梗塞など重大かつ突然の病を発症し、わずか数年の間に急激に心身の体調を崩したり、命すら失う…不思議な現象として企業人事や役員室では囁かれてきました 。
或いは苛烈な受験戦争がある地域(特に日本やアジア諸国)では、無事に受験を突破した後に同様にメンタルの不調になる学生が一定数でることも教育者や発達心理の現場では公然の秘密です。
いずれも一見、矛盾する現象です。何年も努力し、時には大きな犠牲まで払って夢にまで見た何事かを達成(到達)した途端であり「重いストレスから解放され、大きな達成感と幸せを噛み締めている」のが自然なはず。なぜ心身に不調をきたし時には生きる事すら諦めるほど絶望してしまうのでしょうか?
またはそこまでではなくても幸せどころか充実を感じられない、失意に沈んでしまうのでしょうか?
しかし全員の方がそうなるわけではありません。一定数の方は、チャレンジを達成した後にそれぞれの夢に描いた通りの幸福感とともに過ごしています。そしてその彼らの心身はより健康にすらなっています。
何がこの明暗をわけるのでしょうか?
近年、心理学や認知行動学、またその知見を利用するコーチングの研究者らは、結果が出る前にその方が、どちらに振れるかが明白になる「決定的な違い」があるといいます。
本来ならご自身でお考えいただきたいところですが(笑)端的にその種明かしをすると
A「事柄(FIRE・定年・受験合格)自体を”ゴール”と設定」
B「事柄はゴールへむかう通過点(道標)とし、人生のゴールは”達成したその先”へ設定」
の違いだといわれています。さらにBの考えだと「万一チャレンジが達成できなくても、より人生の充実度が高い」というのです。さらに研究者らは、FIREや受験などのイベントは間違っても人生のゴールにしてはならない。とまでいうのです。
この2つの違いは特にFIREや経済的自由で考えるとわかりやすいかもしれません。 一般的につい「お金が欲しい」と表現する方が多いですが、これを突き詰めて考えれば、最終的に欲しいのはそのお金によって買うモノやサービス…ですらなく「金銭で得られた物事によって心の中で生まれる「体験や感情」である…ことに気がつかれるでしょうか?
確かに、無人島や砂漠に一人で迷い込んだ時に「カバンいっぱいの札束」がどれほど無意味かと考えれば「お金という物質」を持っただけの状態とは、幸福感の十分条件を満たせません。さらに幸せを感じた時は必ずお金を得た時..でもないのは多くの方が実感されるところ。つまり実は金銭は幸せ感の必要条件も満たしていない。これが事実です。
これがわかると、FIRE(就職、定年など)経済的なチャレンジ自体はただの通過点となり、人生のゴールに設定するには足りないこと。そしてFIREへの憧れの本質は、生きるためやりたくもない仕事や義務(ライスワーク)からの解放や、それにより可能になる本当にやりたい何か(ライフワーク)によって得られる”感情”であるという構図がみえてきます。
こうすると自然に「FIREのその先へ」と視座が動いたり。チャレンジ自体より「その先」のワクワクが心の中で大きくなって行く実感があるかもしれません。そしてそのような意識であるほど「チャレンジの達成後」の幸福感が強いそうです。
いまだ多くの方が、従来型、つまり不幸になりがちな「受験、就職、結婚、定年、FIREなどを人生のゴールにする」という「手段の目的化」の落とし穴にはまっているようにも拝見します。
このような「ゴール設定の落とし穴」や「メンタルの向け方」は近年日本でも一般化してきた「コーチング」や認知行動学などで知見を増やすことができます(なお「思考はクセ」なのでただの読書よりワークショップ等の体験型学習の方が大人でも学びは圧倒的に早くなります)
自分の設定はもとより、部下やお子様にそのような誤った設定をしていないか常に確認しておきたいものです。
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参考:
【記事監修者】
ご自身とお子様のため資産運用を学び、FIREを目指したい方
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まつだ(ハミルトン)よりこ
株)サスティナブルライフデザインスクール
CSO(チーフ・サスティナビリティ・オフィサー)
“多様性をチカラ”にするインクルーシブ教育アドバイザー
幼少期の”まるで魔法”な時期を最大活用し「バイリンガルも当たり前」にする”エデュ・ロードマップ(学びの地図)”を提唱。
国際結婚によりバイリンガル(多言語&多文化)育児の必要性に直面。在米経験を経て帰国後より教育コーチングを開始。自治体、企業、各種団体へは各種ESG (SDGs、DE&I) の啓発プロジェクトの企画から運営(PMまで)を提供。自身も登壇多数。
IFA。社会科教員I種免許(中高)。留学アドバイザー(内閣府認定NPO留学協会)