「どの融資を選ぶべきか分からない」「公的融資と民間融資、何が違うのか?」と悩む経営者も多いのではないでしょうか。企業が成長する過程では、時期や目的に応じた適切な資金調達が不可欠です。
本記事では、資金の使い道・担保の有無・返済期間といった分類ごとに融資の種類を整理し、企業フェーズ別の最適な選び方まで詳しく解説します。
資金繰りに悩まない経営を実現するために、融資制度の違いと特徴をしっかりと理解しておきましょう
融資の種類は「目的・担保・期間」で分類できる
企業向け融資は「何に使うか」「担保が必要か」「いつまでに返すか」によって分類できます。それぞれの視点から種類を整理することで、自社に合った資金調達方法を見つけやすくなりますよ。
資金の使い道に応じた融資の種類
融資は使い道によって「開業資金」「運転資金」「設備資金」などに分類されます。
用途に合った融資を選ぶことで、審査に通りやすくなり、返済計画も立てやすくなるでしょう。
新たに事業を始める際は「開業資金」に特化した制度を活用できます。日本政策金融公庫の創業融資や、自治体が支援する制度融資が代表的です。
日常の仕入れや給与支払いといった流動的な費用には、「運転資金」として短期融資やビジネスローンが適しています。
一方で、機械の導入や店舗の改装など大きな出費が必要な場合は、「設備資金」向けの融資が有効です。ただし、返済期間が長めに設定される傾向があり、担保が求められることもあります。
担保の有無による融資の種類
融資は「無担保」と「有担保」に分けられ、それぞれ資金調達のスピードや審査基準に影響を与えます。
無担保融資は、担保や保証人が不要で、創業期や中小企業に利用されやすいのが特徴です。日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や、自治体の制度融資などが該当します。審査はやや厳しい場合もありますが、資産を持たない企業でも申請しやすいのが利点です。
一方、有担保融資は土地や建物などを担保に入れることで、高額な融資を受けやすくなります。返済期間も長めに設定されることが多く、金利も比較的低く抑えられる傾向です。ただし、返済が滞った場合は担保資産を失うリスクがあるため、慎重な判断が必要になります。
企業の状況や目的に応じて、担保の有無を含めた選択を行うことが重要です。
返済期間による融資の種類
融資は返済期間の長さによって「短期融資」と「長期融資」に分類されます。短期融資は、仕入れや人件費、季節的な資金不足など一時的な支出に対応するためのものです。
返済期間は1年以内が一般的で、当座貸越やビジネスローンなど、迅速な資金調達が可能な手段が代表例として挙げられます。
一方、長期融資は設備投資や新規事業の立ち上げなど、大型の資金需要に対応するためのものです。返済期間が数年〜10年超となる場合もあり、月々の返済負担を抑えながら資金を活用できます。ただし、金利や総返済額、返済計画の策定には十分な注意が必要です。
自社の資金ニーズとキャッシュフローを踏まえ、短期か長期かを正しく見極めることが資金繰りの安定につながります。
公的融資と民間融資の違いも正しく理解しよう
融資には、国や自治体が提供する「公的融資」と、銀行やノンバンクなどの「民間融資」があります。
それぞれ仕組みや審査基準が異なるため、違いを理解したうえで選ぶことが大切です。
ここでは、それぞれの特徴と活用シーンを詳しく見ていきましょう。
公的融資:信用力に不安があっても使いやすい支援制度
公的融資とは、国や自治体などの公的機関が提供する融資制度で、創業期や小規模事業者でも利用しやすいのが特徴です。
信用力が十分でなくても申請できる制度が多く、起業支援や設備投資、運転資金など幅広い目的で活用されています。
日本政策金融公庫や自治体の制度融資は、低金利または無利子で利用できるケースもあり、
民間の融資に比べ、金利が抑えられているのも特徴です。
ただし、手続きや審査に時間がかかる点には注意が必要なため、資金が必要になるタイミングを逆算して、余裕を持った申請準備が欠かせません。
民間融資:実績や信用を活かして柔軟な資金調達
民間融資は、銀行や信用金庫、ノンバンクなどが提供する融資で、企業の信用力や実績が重視されます。とくに銀行融資は、大口資金の調達が可能ですが、創業間もない段階では審査が厳しく、金利も公的融資に比べて高めに設定されることが一般的です。
一方、信用金庫は地域密着型の支援を行っており、実績がついてからの利用には適しています。ノンバンク系は審査が通りやすいものの、金利負担が大きいため、創業初期には慎重な判断が必要です。
民間融資は、公的融資よりも柔軟でスピーディーな対応が期待できますが、条件面では負担が大きくなる場合があります。資金の使い道や返済計画に応じて、慎重に選ぶことが重要です。
企業フェーズ別に最適な融資を選ぼう
企業は、創業、成長、安定といった事業の段階ごとに資金の使い道や調達方法が異なります。
自社の状況に合わせた融資を選ぶことで、無理のない資金計画が立てやすくなります。
ここでは、それぞれの段階に適した融資の特徴や選び方を具体的に見ていきましょう。
創業期:信用力がなくても活用できる融資制度
創業直後の企業は、まだ実績や信用力が乏しいため、民間融資では審査が通りにくい場合もあります。創業期に頼りになるのが、公的機関が提供する創業支援向けの融資制度です。
中でも代表的なのが、日本政策金融公庫の「新規開業資金」で、無担保・無保証人でも申請できるのが特徴です。自己資金がなくても申し込めるうえ、利率は最大0.65%引き下げ、返済期間も最長20年と長期に対応しています。
事業のスタートを支える現実的な手段と言えるでしょう。
成長・拡大期:設備投資や人員強化を支える中長期資金
事業が軌道に乗り、売上が拡大してくる成長期には、さらなる発展のための資金が必要になります。設備投資や人員の増強、拠点の拡大などに対応する中長期的な資金調達がポイントです。
具体的には、銀行融資やリース、長期ローンなどが選択肢となります。とくに銀行融資では、創業時よりも信用力が増しているため、高額かつ好条件での融資が期待できる場合もあるでしょう。
また、設備資金に対しては返済期間の長い融資が設定されることが多く、月々の返済負担を抑えやすいのも利点です。
事業の成長にあわせて、必要なタイミングで資金を確保できるよう、計画的に動きましょう。
安定期・再構築期:信用力を活かして柔軟に資金運用
事業が安定してきた段階では、売上や信用力が一定の水準に達しているため、資金調達の選択肢も広がります。借入の条件交渉がしやすくなるほか、既存融資の見直しや資金繰りの最適化が重要です。
過去の融資を金利の低い条件で借り換えたり、複数の借入を一本化したりすることで返済負担を軽減させられるでしょう。また、返済計画の変更を通じてキャッシュフローの安定を図るケースもあります。
このような資金運用は、ただ借りるだけでなく、経営全体の効率化にもつながるでしょう。
融資タイプごとのメリット・デメリット
融資には、公的融資・民間融資・担保の有無など、さまざまなタイプがあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴を理解したうえで自社に合う方法を選ぶことが大切です。
各融資ごとのメリット・デメリットについて見ていきます。
公的融資のメリット・デメリット
公的融資は、国や自治体などの機関が提供するもので、特に創業期や小規模事業者にとって利用しやすい制度です。
メリットとしては、金利が低く、無担保・無保証でも申請できる制度がある点が挙げられます。また、返済期間が長めに設定されていることも多く、資金繰りの安定につながりやすいのも特徴です。
一方で、デメリットは手続きに時間がかかることです。審査は慎重に行われるため、急な資金需要には対応しにくい側面があります。
公的融資は、スピードよりも安定性や条件の良さを重視したい企業に向いている選択肢です。
民間融資のメリット・デメリット
民間融資は、銀行や信用金庫、ノンバンクなどが提供する融資で、実績や信用力に応じて柔軟な資金調達ができるのが特徴です。
メリットとしては、審査から融資実行までのスピードが早く、融資額や条件の幅も広いため、用途や状況に応じた選択がしやすい点が挙げられるでしょう。とくに、急な資金ニーズがある場合や、事業が成長段階にある企業には適しています。
一方、デメリットは金利が比較的高めで、信用力や過去の実績が審査に大きく影響することです。創業直後の企業にとっては、融資のハードルが高くなる傾向があります。
タイミングを逃さず資金を確保したいときに、頼れる手段と言えるでしょう。
無担保融資・有担保融資のメリット・デメリット
融資は担保の有無によって「無担保融資」と「有担保融資」に分かれ、それぞれに特徴があります。
無担保融資のメリットは、担保や保証人が不要なため申し込みやすく、創業期や中小企業でも利用しやすい点です。一方で、融資額の上限が低めに設定されることが多く、金利もやや高くなる傾向があります。
有担保融資は、土地や建物などの資産を担保にすることで高額かつ低金利の融資が受けられる一方、返済が滞れば担保を失うリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
事業の規模やリスク許容度に応じて、どちらが適しているかを見極めましょう。
短期融資・長期融資のメリット・デメリット
資金調達を考える際、返済期間の長さによって「短期融資」と「長期融資」を使い分けることが重要です。
短期融資は、仕入れや人件費など、すぐに必要となる支出への対応に適しています。融資実行までのスピードが早い一方で、返済期間が短いため、月々の返済額が大きくなりやすい点は注意が必要です。
長期融資は、設備投資や拠点拡大といった長期的な資金需要に向いています。返済期間が長く設定される分、毎月の負担を抑えられますが、総返済額が増える可能性もあります。
キャッシュフローと照らし合わせながら、最適な融資期間を見極めることが大切です。
自社に合った融資を選ぶための判断基準
融資を受ける際は、自社の状況や目的に合った制度を選ぶことが欠かせません。
ここでは、適切な融資を見極めるための基本的な判断ポイントを整理して解説します。
融資の目的を明確にして使い道に合った制度を選ぶ
融資を受ける前に、資金の使い道を明確にすることが非常に重要です。
運転資金・設備投資・創業支援など、目的によって適した融資制度は異なります。
使い道がはっきりしていないと、審査に通りにくくなるだけでなく、条件のミスマッチが起きる原因にもなりかねません。
まずは、何にいくら必要かを具体的に整理し、その内容に対応した制度を選ぶようにしましょう。
金利・融資額とのバランスを検討する
融資を検討する際は、金利と融資額のバランスをしっかりと確認することが大切です。
金利が低ければ返済負担は軽くなりますが、借入可能額や審査基準が厳しくなることもあります。
また、高額の融資を希望すると、担保や保証人が必要になる場合もあるため注意が必要です。自社の資金ニーズや返済能力を踏まえ、無理のない条件で借りられる制度を選びましょう。
金利と返済期間が自社のキャッシュフローに合うかを確認する
融資を受ける際は、金利の負担と返済期間の長さが、キャッシュフローに無理なく収まるかを確認することが重要です。
返済期間が短すぎると月々の返済額が重くなり、資金繰りを圧迫する恐れがあります。一方で、期間を長く設定すれば毎月の返済は楽になりますが、総返済額が増える可能性もあります。
返済シミュレーションを行い、自社の資金状況に合ったバランスを見極めましょう。
まとめ
ここまで、融資の種類や特徴、企業の成長段階に応じた選び方について解説しました。
融資の種類や制度には、それぞれ対象や利用条件があり、向き不向きも異なります。
資金の使い道や返済計画を明確にし、自社にとって無理のない方法を選ぶことが、安定した経営につながります。
急ぎの資金調達だけでなく、将来を見据えた計画的な融資活用を心がけましょう。