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新しい大学入試の「総合型選抜」や推薦で”社会貢献”が注目される理由:日本の入試は世界標準へ?

2025.03.05

2024年、日本の大学入試は転換期を迎えました。従来の一般入試の受験者数が減少し、推薦型・総合型選抜が過半数を占めた初めての年となった事は多くの方が驚かれたかと存じます。

ただこの「総合型選抜」について、留学アドバイザーでもある筆者には、とても馴染みのある方式です。特に現在の日本のスタイルは米英の大学入試制度のミックス的なものが多いと感じます。ただ各学部レベルで自由に設定できるため、国内の選抜方法は多様化し、すでに500種類以上が存在するとも言われています。

そしてこれからは、今のように親や学校に指示されるまま、その場限りで「志願者本人の情動がなんら伴わないボランティア活動」などは当然通用しなくなるのは時間の問題です。(少なくとも表面的だけでも)よりお子様が主体的に関わった活動とそのレベルの提示が求められてゆくはずです。

なぜ社会貢献が重視されるのか

実は米国では20年ほど前から、共通テストの成績だけでは上位層の能力差を測ることが難しくなっていました。さらに調査すると、どの大学も共通で、入学後の成長、卒業後の卒業生の社会的な貢献のいずれでも「点数以外」の要素で選ばれた学生(特定の才能を持つ学生、女性、多様な背景を持つ学生など)がペーパーテストの上位者よりも優れた成果を出すこと、卒業後も持続可能な社会のための優れた人材となる傾向が分かりました。入試のペーパーテストは「本当の能力や可能性」を計測できていない。という証明ともなり上位校ほど抜本的改革の必要に迫られました。

そもそもなぜ入試をするのか?大学やアカデミアの世界では、知識の習得に加え、主体的に探求できる学習者、人格的に優れ、社会に良い影響を与える人材を上位校ほど探しています。さらに、現在人類が直面する複雑な、そして過去に例のない未曾有そしてきっ急の課題を解決するためには、多角的な視野、仮説を立て検証する能力、多様な人々をまとめ上げるなど、これまでにない要素の能力も必要です。そして人間の影響が惑星レベルに及ぶ現在、権力をもつほどその判断はより人道的観点、そして地球レベルでの社会(人類)全体の繁栄という目的のもとに行われる必要もあります。

そして人間(ホモ・サピエンス)はその個体の行動原理として、自己保存の欲求は個体だけでなく、集団の維持・継続に向けられてきた事が人類学や古今東西の歴史の社会学的な検証から確認されています。事実、近年進歩の目覚ましい脳科学では、共助(助け合い)は、本能的に快い行動であり、脳内で「幸せホルモン」であるオキシトシンが分泌されることも知られています。そして興味深いことに「助けられた」側よりも「助けた側」により強い反応がある事もわかってきました。

つまり、誰かが人助けをした事によって得られる最大の報酬とは、その成果を実感した瞬間にすでに脳内で生じ受け取っている事になります。認知行動学において「利他の本質は、互恵性にある」という考え方もこれらに基づいています。なお実際に複数の支援の現場、また現在も支援団体のプロジェクトに関わる人間として、現場でこの瞬間を何度も目撃もしてきたと感じています。

さらに「社会の勝ち組」である伝統的富裕層や教養層、そして帝王学では古今東西共通で「利他は自分も得をする」という考え方も一般的で、家庭教育で子どもたちに伝えています。

実際、一千年以上前に編纂され、今も西欧社会の教養や倫理感コアでもある新約聖書には「”受けるよりは与える方が幸いである”(新訳聖書・使徒言行禄20章35節)」と記されています。また類似の記載が多くの古典や帝王学にもある事をご存知の方は多いとも存じます。

前頭前野の発達と社会性

人が社会的な行動をとる際、その思考には大脳の前頭前野の機能が関係するとされています。そしてこの前頭前野が発達しているほど、社会的な問題に気づき、解決のために行動する傾向があると言われています。従いもし「主体的に学び、人格的にバランスのとれた人間」を選抜したいなら、よりよく社会貢献活動への関心や実績を示す学生を選抜すること、またその内容を重視することはとても合理的ということになります。同時にペーパーテストで測ろうとした、既存の知識の記憶や正確性は、AIが普及するほど万民のアクセスが容易、また質も含めて代替可能になり「ただ知っている」というスキルはその重要度を大きく下げつつあります。

幼少期からの発達

脳の基本的な発達。その段階や傾向は人種をこえて、ほぼ同じなようなので人間の社会性は思春期以降に高まることも人類共通と考えられていますが、その基盤となるのはやはり幼少(プライマリー)期の脳の発達をベースにしているようです。幼少期に様々な感覚を開発、またそれらを統合し、人間的な愛情を感じたり情緒を育み、発達段階に応じた経験を積むことが、思春期以降に社会性を学習するセンサーや前提条件となる事も科学的に示唆されつつあるからです。

このように、日本の大学入試が世界標準に近づいていく中で、受験生は、主体的に学び、人格的にもバランスのとれた人間として成長することが求められています。そのためには、幼少期からの多様な経験や、社会貢献への意識を育むことが重要となりますし、受験に際してもその活動をまとめることでお子様の興味と大学のよりよいマッチが自然に行える図式にもなります。

このように教育の分野も科学の進歩、グローバル化も進んでゆきます。ぜひ世界から広く知識を得ながら長期的視点でお子様の教育を考えていただきたいと存じます。またそのお手伝いもできればと各種プログラムをご提供しています。

【参考】

親切は脳に効く 単行本(ソフトカバー) – 2018 デイビッド・ハミルトン 

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 – 2014  アダム グラント   

ご自身とお子様のため資産運用を学び、FIREを目指したい方&バイリンガル育児や先進教育に関心のある方はこちら:https://slds.co.jp/

まつだ(ハミルトン)よりこ

株)サスティナブルライフデザインスクール  

CSO(チーフ・サスティナビリティ・オフィサー)

“多様性をチカラ”にするインクルーシブ教育アドバイザー

幼少期の”まるで魔法”な時期を最大活用し「バイリンガルも当たり前」にする”エデュ・ロードマップ(学びの地図)”を提唱。

国際結婚によりバイリンガル(多言語&多文化)育児の必要性に直面。在米経験を経て帰国後より教育コーチングを開始。自治体、企業、各種団体へは各種ESG (SDGs、DE&I) の啓発プロジェクトの企画から運営(PMまで)を提供。自身も登壇多数。

社会科教員I種免許(中高)。留学アドバイザー(内閣府認定NPO留学協会)。IFA

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