子どもが9歳ごろまでの「プライマリー期」は、実は非常に特殊な時期だということが近年次々に脳科学、教育学、発達心理学、教育経済学などの調査で明らかになってきています。元々この時期は脳が急速に発達する時期(ほぼ出来上がる。その後の脳とは状態や働き方もちがう)としても知られてきました。
そして近年、特に脳科学の発達から、仮説とされていたそれぞれの能力が最も発達する「臨界期」の可能性が確実視や強く示唆されるようになってきました。そしてノーベル経済学賞受賞者の30年以上に及ぶ実証検証からこの期間に受ける教育や環境は、それ以降に比べ子どもの将来について、投資費用からの効果(ROI)に換算して10倍かそれ以上というは以前のコラムでも触れた通りです。その後これらの研究は再検証が試みられましたが常に肯定、再確認され、海外の主要国の学校教育カリキュラムも多くがすでにこれらの知見をベースに切り替わっています。
しかしながら日本の教育システムはまだ対応が始まったばかり。そのサポートは主に保護者(親)の気づきからのフォローがたよりです。では、日本の親はどのようなことに留意してあげればいいのでしょうか?
まず、プライマリー期の子どもたちについて知っておきたいのは、「非認知スキル」と呼ばれるスキルがこの時期に最も形成されるということです。通常の教育やテストでは測定しづらいこの非認知スキルとは、感情のコントロールや人間関係の構築能力、柔軟な思考などを指します。これらのスキルは、実際には人生の充実感や成功に欠かせない要素となってくるのです。
また、この時期に知覚や運動神経、音感、(バイリンガルも!)等さまざまな能力の基礎ができあがります(端的にいうと音痴、運動音痴、語学音痴の可能性はこの時期の過ごし方で大きく増減することもわかっています)。またこれらは子どもが物事を感じ、考え、表現するため外界を認知し、知覚の基礎となりますし。これらの知覚や能力は互いに影響し合いながら成長するため、バランスの取れた教育と環境が好ましいことが既に判明しています。
ただし子ども一人一人には特性がありますし、成長のペースも異なります。つまり最も効果的な教育方法は、子どもの特性に合わせた「個別最適化」です。個別に最適化された環境でこそ、子ども達はそれぞれの才能を最大開花させてゆけます。
そして、日本の方に特に知っていただきたいのは、個別最適化とともに重要な「SEL(Social Emotional Learning」)」です。SELは「情動ある学び」とも呼ばれ、学習者の感情が伴う=楽しいと感じる時に最も効率良い学びがあるということが脳科学で証明されています。
さらに、子どもが健やかに成長するためには、特に保護者の「無条件の愛情」が必要です。この愛情こそが、子どもの自己肯定感を育む核心になります。親は、ぜひ子どもが理解し、実感できる方法で愛情を伝えてあげてほしいと思います。例えば、一緒に遊んだり、温かい言葉をかけることで、子どもは愛されていると感じることができます。
また、人格形成には「共感」や「社会性」、つまり他者との関わりを学ぶ経験が不可欠です。友達との遊びや、家族とのコミュニケーションを通じて、互助や協力の精神を身につけていくのです。このような体験は、子どもが社会で生きていく力を養うために非常に重要です。
保護者ができることは、子どもたちが多様な体験をしながら成長するためのバランスの取れた環境をつくることです。遊びや学びを通じて、子どもたちが自由に動き回れるような安全な空間を提供することも大切です。子どもが自分のペースで成長できるような環境づくりに心がけましょう。
このようにプライマリー期は、人間として基本的な部分を形成する時期であり、パソコンいうなればOSとなります。この基礎がしっかりするほど、より豊かな人格を育む基盤を築いていく可能性、そして才能開花にもつながります。
なによりも子どもが心豊かに成長することは子どもの人生の充実感や自己実現へとつながります。私たち大人ができるサポートをしっかりと考えていきたいですね。
参考図書:「科学的根拠(エビデンス)で子育て 教育経済学の最前線」
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まつだ(ハミルトン)よりこ
株)サスティナブルライフデザインスクール
CSO(チーフ・サスティナビリティ・オフィサー)
“多様性をチカラ”にするインクルーシブ教育アドバイザー
幼少期の”まるで魔法”な時期を最大活用し「バイリンガルも当たり前」にする”エデュ・ロードマップ(学びの地図)”を提唱。
国際結婚によりバイリンガル(多言語&多文化)育児の必要性に直面。在米経験を経て帰国後より教育コーチングを開始。自治体、企業、各種団体へは各種ESG (SDGs、DE&I) の啓発プロジェクトの企画から運営(PMまで)を提供。自身も登壇多数。
社会科教員I種免許(中高)。留学アドバイザー(内閣府認定NPO留学協会)。IFA